不動産証券化の鑑定評価について
Q&A
Q1:【土壌汚染】
土壌汚染の調査はどのように行うのですか。また、調査の結果、土壌汚染の懸念がある場合の評価はどうなりますか。
A1:土壌汚染の調査は不動産鑑定士の独自調査とERを活用した調査を行います。
■不動産鑑定士独自の調査
役所調査や過去地図調査を行い、過去から現在に至るまで土壌汚染の原因となるような工場等の敷地として利用されていた事実の有無を確認します。
■ER活用の調査
依頼者から提示されたエンジニアリングレポートの土壌リスク調査で土壌汚染の懸念がないか確認します。
■土壌汚染の懸念がある場合の評価
過去に土壌汚染があった場合、除去作業等が適切に行われたかを確認のうえ、減価の有無を判断します。
また、土壌汚染の存在の可能性は否定できないが、土壌汚染が明らかでない場合は、対象不動産の現況土地の状態や現況建物の用途等を勘案のうえ、減価の有無を判断します。
Q2:【賃貸面積】
専用部の賃貸面積について、現テナントとの契約面積は、直近で測った面積(CAD面積など)と誤差がありました。評価ではどちらの賃貸面積を採用しますか。
A2:今後、テナントの入替時には直近で測った面積に基づき契約されると考えられるので、直近で測った面積を採用します。
Q3:【一棟貸しテナントの退去】
棟貸しのメインテナントが退去することになりました。評価への影響を教えてください。
A3:一棟貸しのメインテナントが退去することになりました。評価への影響を教えてください。
収益還元法でメインテナント退去後のシナリオを検討します。退去後はマルチテナント化を想定するのが一般的です。その場合、類似物件の実績等に基づき、対象不動産の新規賃料水準や入居までの期間、入居後の標準的な空室率を査定します。
Q4:【事業用不動産の賃料の妥当性】
ホテルやショッピングセンターなど事業用不動産の評価において、現テナントの賃料の妥当性はどのように判断するのですか。
A4:事業用不動産の賃料は、対象不動産の売上や費用などの収支実績に基づき、テナントの賃料負担力を検証します。現テナントの賃料が賃料負担力を上回っている場合は、将来的の賃料減額のリスク等あるため、賃料負担力を踏まえた適正賃料を検討のうえ、評価を行います。
Q5:【開発ファンドの鑑定評価】
建物は基本設計の段階で、2年後に竣工予定ですが、鑑定評価の依頼はできますか。
A5:この場合、開発中の土地価格評価として鑑定評価を承ります。
Q6:【竣工予定の建物及びその敷地の鑑定評価】
建物が3か月後に竣工予定ですが、鑑定評価の依頼はできますか。
A6:価格時点において建物が竣工しているものとして、「未竣工建物及びその敷地」の鑑定評価となります。
Q7:【土地建物価格】
対象不動産の土地建物価格はどのように試算するのですか。
A7:投資用不動産の鑑定評価は、収益価格(DCF法と直接還元法)と積算価格を試算します。積算価格において、土地建物価格を査定します。
Q8:【現地実査】
現地実査を行う際の留意点を教えてください。
A8:現地実査は管理者の立ち合いのうえ、建物の内覧、敷地内の境界確認等を行います。
竣工図やレントロール等をご提示いただき、外装・内装・設備等の劣化状況、テナント入居状況の照合等を確認します。また、境界杭や越境の有無も確認します。拝見箇所は屋上、各階共用部、専用部、駐車場、管理室、機械室等になります。
Q9:【エンジニアリング・レポート(ER)の入手】
ERは必須ですか。また、いつまでに用意すれば良いですか。
A9:証券化の鑑定評価ではERのご提示をお願いしております。
ERは鑑定評価と同時に作成が進められる場合が多いため、まずは、ERのドラフト版をご提示頂きます。鑑定評価書はERのファイナル版が提示された後に発行となります。
Q10:【エンジニアリング・レポート(ER)の活用】
ERは鑑定評価でどのように活用するのですか。
A10:ERでは建物状況調査、建物環境リスク調査、土壌汚染リスク調査、地震リスク調査等を行います。不動産鑑定士は実地調査のほか、ERの調査結果を活用し、遵法性に問題ないか、環境リスクや地震リスクはないか等を判断します。
また、収益還元法ではERの修繕更新費用を踏まえて小規模修繕費や資本的支出の額を、原価法ではERの建物の再調達価格を踏まえて再調達原価を査定します。
なお、鑑定評価書には「エンジニアリングレポート確認・活用一覧表」を添付します。
Q11:【底地の鑑定評価】
底地の鑑定評価の基本的な考え方を教えてください。
A11:底地の鑑定評価額は収益価格を重視して決定します。
収益価格は地代収入が見込まれる期間の純収益の現在価値を求めます。
定期借地権が付着した底地価格は、契約期間中の上記純収益の現在価値と、契約終了時における更地価格の現在価値を加算した額になります。
Q12:【太陽光発電施設の鑑定評価】
太陽光発電施設(及びその土地)の鑑定評価の基本的な考え方を教えてください。
A12:太陽光発電施設(及びその土地)の鑑定評価額は収益価格を重視して決定します。
収益価格は太陽光発電収入が見込まれる期間の純収益の現在価値を求めます。
対象物件は一般的には再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)により、固定価格での買取期間が限定されている太陽光発電施設となります。この場合はDCF法を採用し、予想可能な収益機関の純収益の現在価値と、契約終了時における復帰価格の現在価値を加算した額が収益価格になります。
Q13:【共有持分の鑑定評価】
対象不動産は共有物件で、共有持分は70%です。鑑定評価額をどのように求めるのですか。
A13:まず、単独所有(100%持分)での価格を求め、これに共有持分(70%)を乗じて鑑定評価額を決定します。
なお、収益還元法、原価法ともに単独所有での試算価格を求めるので、鑑定評価書においてもそれぞれの単独所有での試算価格が示されます。
Q14:【定期借地権付建物(貸家)の鑑定評価】
定期借地権付建物(貸家)の鑑定評価の基本的な考え方を教えてください。
A14:定期借地権付建物(貸家)の鑑定評価額は収益価格を重視して決定します。
収益価格は契約期間中の純収益の現在価値を求めます。つまり、契約期間中の上記純収益の現在価値と、契約終了時における建物取壊し費用の現在価値を控除した額になります。借地契約の残存期間が短い場合は、契約期間中の純収益の現在価値が低めになることに注意が必要です。
Q15:【太陽光発電施設以外の再生可能エネルギー施設の鑑定評価】
風力、水力、バイオマス、地熱発電所の評価は可能でしょうか。
A15:可能です。太陽光発電施設(及びその土地)と同様に収益価格を重視します。利回りは太陽光発電施設等の利回りと比較しながら検討します。