一般的には、減価償却資産が利用に耐える年数をいい、税務上の法定耐用年数がよく知られている。税務上は、恣意性を排除するため「資産の種類」「構造」「用途」別に耐用年数を定め、画一的に運用されるが、不動産の鑑定評価では、建物の耐用年数について、税務や企業会計上の耐用年数と特に区別し、経済的残存耐用年数という概念を用いており、必ずしも法定耐用年数と一致するものではない。
「経済的残存耐用年数」とは、価格時点において、対象不動産の用途や利用状況に即し、物理的要因及び機能的要因に照らした劣化の程度並びに経済的要因に照らした市場競争力の程度に応じてその効用が十分に持続すると考えられる期間」と定義され、具体的には以下のとおりである。
「物理的要因に照らした劣化の程度」というのは、築古であっても、手入れがよく耐震性等に優れた建物は、法定耐用年数を超えていても鑑定評価上は、なおも耐用期間を認めることがあるということで、逆の場合もある。
「機能的要因に照らした劣化の程度」というのは、オフィスビルであれば、設備が古くIT化に対応できない、使い勝手が悪い間取りである、省エネルギー化できていない等、社会的変化に取り残された陳腐化の程度を指す。
「経済的要因に照らした市場競争力の程度」というのは、経済的観点からより高次の利用が望まれる地域にあっても低次の利用に留まることや賃料水準からみた維持管理費とのバランスを欠く場合などは、市場競争力の低下をもたらす。
これらの要因は、それぞれが密接に関連するものであり、不動産鑑定士は、実地調査を踏まえて、最有効使用の観点から総合的に経済的残存耐用年数を判断することとなる。