スタッフコラム

東京

最近のホテルトレンドとコンドミニアムホテルについて

1、はじめに

観光庁の「宿泊統計旅行調査」によると、足元のホテル市場は、インバウンド需要の牽引により宿泊者数がコロナ禍前の水準を上回って推移する等、活況を呈しています。
日本政府観光局(JNTO)によると、7月の訪日外客数は約329万人と2か月連続で単月過去最多となり、ホテル客室単価も高い伸びを継続しています。

ホテル形態は、伝統的にビジネスホテル(バジェット)、リゾートホテル、シティホテル、ラグジュアリ-ホテル等に分類されてきましたが、近年世界的な消費スタイルの変化・旅行需要の拡大等を受け、マーケットが多様化しています。

先般のコラム記事では、ライフスタイルホテルアパートメントホテルを取り上げました。
今回は、(1)大手デベロッパーである大和ハウス工業㈱が市場参入を表明(2026年度までに分譲事業開始)する等、今後のマーケット拡大が見込まれること、(2)海外投資家を含む富裕層をターゲットとするハイブランド消費、高級・高額不動産(ラグジュアリーホテル、高級レジデンスなど)が活況を呈していること等に着目し、コンドミニアムホテルを取り上げました。
コンドミニアムホテル分譲(区分所有)事業におけるメインプレーヤー(開発事業者:東急不動産㈱、販売会社:東急リゾート)の取組状況等を踏まえ、今後の取引拡大の可能性等についてまとめてみました。

2、コンドミニアムホテル

(1)コンドミニアムホテル

コンドミニアムホテル

(2)特徴

①商品設計
以下のとおり、自己利用メリット(優先利用)と投資メリット(賃料ペイバックによる運用)の両面をもつ商品設計となっています。コンドミニアムホテルの商品設計

コンドミニアムホテルのメリット

その他メリットとして、ホテルユニットを自己利用しない間も、ホテル客室として維持管理が施され運営に供されることから、資産価値の保全が図られやすい、等が挙げられます。

②他の商品(リゾートマンション、会員制リゾートホテル)との比較

コンドミニアムホテルとリゾートマンションとの比較

コンドミニアムホテルと会員制リゾートホテルとの比較

③事業関係者コンドミニアムホテルの事業関係者(事業開始~分譲販売)(留意点)
◯分譲段階においては、ホテル運営のトラックレコードがないため、開発事業者は、周辺の稼働ホテルの状況やコンドミニアムホテルの販売実績等を参考に、対象ホテル(客室ユニット)の分譲価格等を決めるものと推察します。
ホテル運営会社の運営力(他ホテルでの運営実績等)も選定にあたり重要なファクターとなります。

◯分譲状況(売れ行き)は、販売会社のターゲット層への販売戦略等に左右されます。

◯開発事業者による継続関与・サポート体制等(分譲後も開発事業者が区分所有部分を有し、事業に継続関与するのか等)を確認します。開発事業者が継続関与する場合は、分譲後、管理組合等の中心的な役割を担うものと思われます。コンドミニアムホテルの事業関係者(分譲後)(注)「管理会社」とは、総会の実施や管理費等の収納、共用部分の維持管理・修繕計画の策定や保守点検業務等の実施を行う会社をいう。区分所有者全員で管理組合を設立するが、運営方式は第三者管理方式をとる。
「ペイバック監視会社」とは、オーナーへ正常に賃料のペイバックが行われるよう、ペイバック監視業務を行う会社をいう。(出所:東急リゾートHP)

④賃料ぺイバックについて(以下のモデルケースを想定)賃料ぺイバックについて(留意点)
◯客室総収入は、ホテル運営会社の運営状況(ADR、稼働率等)に左右されます。

◯賃料ペイバックは、客室オーナー利用(特別料金による優先利用)を除いた客室総収入をもとに計算されます。

◯主な確認事項は以下のとおりです。

  • 賃料ペイバックについては、客室総収入の配分割合(ホテル運営会社・客室オーナー間)や各客室オーナーへの配分率の決定方法(分譲販売価格、自己利用を除く利用日数、客室ユニットの面積等区々)と実際の運用状況、ペイバック監視会社によるチェック機能等。
  • 客室オーナー利用料については、その内容(利用可能日数、利用日数、特別料金等)。
  • 客室維持基本料については、客室オーナー負担の範囲及びその内容。

3、今後の取引拡大の可能性について

海外富裕層や国内富裕層のリゾート需要をターゲットとしたビジネスモデル(自己利用メリットと投資メリットの両面が享受できる区分所有型ホテル分譲)であり、足元の取引はやや限定的ですが、今後は、大和ハウス工業㈱を始めとする大手デベロッパーの参入が見込まれ、富裕層を中心として投資対象としての注目度が高まっていくと推察します。

区分所有によるホテル分譲であり、ホテル一棟への投資とは異なったマーケットが形成されることから、引き続き市場の売買動向を注視していきたい。

トップページに戻る

PAGE TOP
Top