押さえておきたい地価公示(2024年)の注目ポイントについて、解説いたします。
なお、地価公示の調査時点は、1月1日午前0時のため、1月1日午後4時10分に発生した令和6年能登半島地震の影響は考慮されていません。予めご注意をお願いいたします。
【REPORT1】全用途平均・住宅地・商業地で3年連続上昇!上昇率も拡大
全国の全用途平均および住宅地、商業地は3年連続で上昇し、上昇率も拡大。地方圏でも上昇率が拡大傾向となっており、上昇基調が強まっている。
全国の地価は、景気が緩やかに回復している中、地域や用途により差があるものの、三大都市圏では上昇率が拡大し、地方圏でも上昇率が拡大傾向となっており、上昇基調を強めています。
2024年の地価公示は、全国平均で住宅地が2.0%、商業地が3.1%、工業地が4.2%の上昇 となっており、全用途平均は3年連続で上昇し、上昇率も拡大しました。
圏域別にみると、東京圏と名古屋圏では、全用途平均と住宅地、商業地がいずれも3年連続で上昇し、上昇率も拡大しています。大阪圏では、全用途平均と住宅地は3年連続、商業地は2年連続で上昇し、それぞれ上昇率が拡大しました。
地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、全用途平均と住宅地、商業地のいずれも11年連続で上昇している状況です。地方圏平均は全用途平均と住宅地、商業地はいずれも3年連続で上昇 しており、地価上昇は全国で鮮明に生じています。
【REPORT2】割安感のある周辺部とリゾート地で力強く上昇
住宅需要は利便性・住環境に優れた地域で堅調に推移している。特に割安感のある周辺部や外国人に人気の高いリゾート地では、高い上昇率を示している。
住宅地は、三大都市圏や地方四市における中心部の地価上昇に伴い、周辺部においても上昇の範囲が拡大しています。周辺部で高い上昇率が生じている現象は全国で見られるようになっており、需要が割安感のある周辺部に広がっています。特に東京圏では、その傾向が顕著であり、上昇率ランキングのトップ10の地点が全て千葉県の地点です。
また、外国人にも人気の高いリゾート地では、別荘やコンドミニアムなどの需要が増大したことで高い上昇率を示した地点も生じています。北海道富良野市は、通年で観光やリゾートを堪能できる人気エリアとなっており、行動制限緩和以降、外国人による別荘やコンドミニアム用地等の需要が一層増大したことから地価が大きく上昇しました。「富良野-201」(北海道富良野市)は27.9%も上昇しており、住宅地で全国1位の上昇率となっています。
【REPORT3】商業地は国内の人流回復と海外からのインバウンドが牽引
都市部の繁華街では、国内の人流回復により地価上昇が生じている。観光地では海外からのインバウンドの回復により地価が力強く上昇している。
全国の商業地では、繁華街を中心に人流回復を受けて飲食店等の店舗の賃貸需要が回復したことで地価上昇が生じています。東京の銀座周辺では富裕層やインバウンド回復による高額品等の消費が好調なことや、接待や会食需要が戻りつつあることで店舗の収益性が回復し始め、地価上昇につながりました。地価が全国1位の「中央5-22」(東京都中央区銀座地区)の上昇率は、2023年が1.5%であったのに対し2024年は3.5%です。
観光地では、入国規制の緩和以降、全国的にインバウンドを含めた観光客が急速に回復しており、地価が力強く上昇している地域が生じています。「大阪中央5-19」(大阪市中央区道頓堀地区)では、2023年の上昇率が1.0%であったのに対し、2024年は25.3%も上昇しました。「大阪中央5-19」の上昇率は大阪圏の商業地では1位であり、全国の商業地でも8位です。
【REPORT4】工業地は地方の企業進出地と都市部の物流適地で力強く上昇
地方では、大型半導体メーカーが進出した地域で地価が広範囲に上昇している。都市部では、近郊の物流適地で地価が上昇している。
地方では、ラピダスが進出する北海道千歳市とJASMが進出する熊本県菊陽町周辺において地価が広範囲に上昇しています。いずれも関連企業の工業用地の取得需要だけでなく、共同住宅やホテル、事務所用地としての需要もあることから、周辺の住宅地や商業地も含めて地価が大きく上昇している状況です。「熊本大津5-1」は商業地ですが地価上昇率が全国全用途の中で1位の33.2%となっています。全国全用途の上昇率の2位は「菊陽5-1」(熊本県菊陽町)、3位は「千歳5-4」(北海道千歳市)であり、全国トップ3はいずれも大型半導体メーカーが進出した周辺地域です。
都市部においては、ネット通販の拡大により都市近郊の物流適地で高い上昇率を示す傾向が続いています。全国の工業地の上昇率ランキングのトップ10は、全て都市部近郊に存在する物流適地の地点が占めています。
注目ポイント 人流回復が見られる商業地では今後も地価上昇が期待できる
近年の商業地の地価は、再開発が行われたところが大きく上昇する傾向がありました。しかしながら、2024年の地価公示では再開発は伴わなくても人流回復によって地価が上昇する繁華街や観光地が出始めた点が新たな動きです。国内外から人を呼び寄せられる地域では、今後も地価上昇が続くものと期待できます。