新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、罹患された方々には心よりお見舞い申し上げます。また、医療従事者をはじめとする感染拡大の抑制にご尽力されている皆様に深く感謝申し上げます。
緊急事態宣言が解除され、経済活動は徐々に再開されていますが、いまだコロナ前の状況まではほど遠く、感染の再拡大にも予断を許さない状況です。不動産市場についても、取引の中止や延期、家賃の減免等、影響が出始めています。このような状況を反映し、毎年9月下旬に公表される土地評価である都道府県地価調査(7月1日時点の更地価格)は、三大都市圏(東京・名古屋・大阪)や地方中核4市(札幌・仙台・広島・福岡)を中心に右肩上がりが続いてきた近年の状況から変化がありそうです。特に、飲食店等が建ち並ぶ繁華街や観光地、ホテル用地の取得競争が過熱していた駅近の商業地などは、前年のプラスから一転、マイナスへと落ち込むことが予想されます。
では、その後、不動産市場はどうなるのか。先行きについては、結局誰にもわかりませんが、過去の傾向から、今後についての予測を立ててみたいと思います。
不動産の価格に影響がありそうで、かつ、不動産の価格に先行するような経済指標から不動産市場の先行きを予測できないかと思い、複数の経済指標と不動産価格との関連を分析し、①法人企業統計調査(経常利益)と②不動産業への新規貸出額の2点に注目しました。
これらの指標と不動産価格を指数化し、グラフにすると下図のようになりました。
①と②の両指数は非常に似た動きをしています。また、不動産価格は、少し遅れてこれらの指数と似たような動きをすることもわかりました。注目すべきは、不動産価格は、両指数から1~3年程度遅れて同じような動きをすることが多いということです。
このことは、グラフの「山」と「谷」を見ることでわかります。
- バブル期(山)
①・②…1989年度
不動産価格…1990年度(1年後) - バブル後(谷)
①・②…1993年度(1番底)
1998年度 or 1999年度(2番底)
不動産価格…2003年度(2番底から4~5年後) - 平成バブル期(山)
①・②…2006年度 or 2007年度
不動産価格…2008年度(1~2年後) - 平成バブル後(谷)
①・②…2009年度
不動産価格…2012年度(3年後) - コロナ前(山)
①・②…2016年度 or 2018年度
不動産価格…2019年度(予測)(1~3年後)
不動産価格について、2019年度が山となるかは未定ですが、先に述べたとおり、2020年度はマイナスも考えられるため、これを前提とすると、不動産価格は両指数のコロナ前の山から1~3年後に山をつけるということになります。このような過去の傾向を参考にするならば、両指数の谷が分かれば、その1~3年後に不動産価格の谷がやってきて、その後上昇に転じるということです。両指数の谷がいつになるかは、最新の公表データを注意深く観察することである程度把握することは可能です。
これは、あくまで分析の一つでしかなく、また、実際に過去と同じようになるかはわかりませんが、先行きを予測する一つの参考にはなるのではないかと思います。
(注)データの出所は以下のとおり。
・法人企業統計調査(経常利益):財務省
・新規貸出額:日本銀行
・不動産価格:東京都
なお、法人企業統計調査(経常利益)は、金融保険業を除く全産業・全規模の年次データ。新規貸出額は、不動産業への設備資金新規貸出額・国内銀行(3勘定合算)のデータ。不動産価格は、各年7月1日を基準日とする東京23区における商業地の平均価格。
田那邉 広明