スタッフコラム

横浜支所

不動産市場の先行き

不動産市場の先行き(続き)

前回、不動産市場の先行きについて、(1)法人企業統計調査(経常利益)と(2)不動産業への新規貸出額の2点に注目して今後の不動産価格を予測しました。

今回は、別の観点から不動産市場の先行きについて考えてみたいと思います。
具体的には、今後の不動産のあり方についてです。

不動産の鑑定評価を行う場合の拠り所である「不動産鑑定評価基準」によると、不動産のあり方は、「不動産がどのように構成され、どのように貢献しているかということ」と定義されています。「構成」とは、建物の有無やどのような用途であるかということ、「貢献」とは、私たち人間に対して不動産がどのような効用を提供しているかということです。
つまり、不動産のあり方は、その時代及びその地域における土地と人間との関係を具体的に現わしているものと言えます。
例えば、昔は農地(構成)として利用されていたものの、時代や地域の変化により、今は住宅(構成)として利用されているといった具合です(農業生産性の提供から居住の利便性及び快適性の提供への変化)。

このように、不動産のあり方は時代の変化等とともに変わっていくものです。

新型コロナウイルスの影響による外出自粛や施設の使用制限等で、社会経済活動が大きく制限されるという、今まで経験したことのないような事態に直面し、この「不動産のあり方」も急激に変化しようとしています。

オフィスでは、出勤制限により在宅勤務が標準化しました。在宅勤務が標準化することで、パソコン上で自己完結できる作業であれば、わざわざ会社へ出勤する必要はないと感じた人も多いのではないでしょうか。一方で、コミュニケーションをとりながら創造していくような仕事の場合は、在宅では難しかったかと思います。
つまり、これからのオフィスは、作業の場からコミュニケーションの場へと変化し、これに伴い、固定の席を持たないフリーアドレスの導入や、共用ラウンジの設置など、コミュニケーションを重視した形に変わっていくのではないかと思います。
また、子育て世代の場合、子供が家にいると在宅では仕事がはかどらないことも多いので、社員の通勤に便利なサテライトオフィスを開設するといった動きもあるかと思います。

住宅では、在宅勤務を機に、自宅に仕事ができるスペースが欲しいと思われた方も多いと思います。近年の住宅市場は、共働きが増えたことなどにより、都心に接近した利便性の高い物件が好まれる傾向にありました。一方で、このような物件は価格が高くなるので、居住スペースは狭くなりがちでした。今後、コロナが終息した後も在宅勤務が標準化すれば、例えば、郊外の住環境良好なエリアに仕事場も備えた広めの住宅を構えるという人も増え、住宅の選好基準や間取りの構成等も変わっていくのではないでしょうか。

店舗は、体験の場としての性格をより強めていくのではないかと思います。単に物を買うだけであれば、今はネット通販でも事足ります。コロナ禍で、その傾向はより強まったと思いますが、実際に目で見て手にとって感じるといった体験は、実店舗ならではです。実店舗はショールームとしての役割を担い、実際の販売はネットで行うという取り組みも増えていくのではないでしょうか。

これらの変化は、もちろんコロナ前からも生じていたことですが、コロナの発生によりそのスピードがはやまったと思います。

このように、不動産市場は急激な変化のときにあり、今後、不動産のあり方は大きく変わることでしょう。変化が激しい中、目下、飲食店経営者やホテル事業者、医療従事者等は大変な状況に置かれていると思います。
しかしながら、私たちは今までも様々な状況に直面してきましたが、その都度、必死に考え、実行し、道を切り拓いてきました。故に、この難局も、新たなアイデアと実行力で、力強く乗り切っていけると確信しています。

田那邉 広明

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