スタッフコラム

東京

建設中の新宿駅

新宿駅周辺の再開発の動向と今後の展望について

1、はじめに

新宿は、乗降客数日本一のターミナル駅である新宿駅(注)を中心に、商業、業務(西新宿に超高層オフィス街を形成)、娯楽、居住等の都市機能が高度に集積し、東京の発展を先導してきました。
(注)1885年の日本鉄道新宿駅の開業を皮切りに、ターミナルとして、鉄道各線が開業。
7路線(JR東日本、小田急、京王、東京メトロ、都営新宿、都営大江戸、西武新宿)8駅が結節し、1日の利用者約380万人を誇る。

一方で、新宿駅周辺は、1960年の「新宿副都心計画」に基づく都市整備(駅ビル、西口立体広場、東口駅前広場等)が行われて以降、約半世紀に亘り大規模な再編が行われていないため、建物の老朽化や駅構造の複雑化(路線の地下化・立体化等による重層化・迷路化)といった課題が指摘されてきました。
また、東京23区内の主要地区である東京大手町・丸の内・有楽町(1980~2010年代)、渋谷(2000~2030年代)、品川(2010年代~)が拠点整備を順次すすめる中、新宿の競争力の低下も懸念されてきました。

東京都の主導する国際都市としての競争力強化ビジョンに則り、2018年に東京都・新宿区により「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」が策定されたこと等を機に、開発の機運が一気に高まりました。
足下、新宿駅直近地区の駅・駅前広場・駅ビル等の一体開発事業(「新宿グランドターミナル」の再編事業)が進捗しています。

ここでは、グランドデザインの策定、開発動向等について整理し、今後の展望について3つの視点から考察しました。

グランドデザインの策定、開発動向、今後の展望

2、グランドデザインの策定

(1)新宿の新たなまちづくり~2040年代の新宿の拠点づくり~(2017年、東京都・新宿区策定)

新宿の将来像として、国内外の人・モノ・情報が集まり、交わり、刺激し合い、更なる魅力や新たな価値を持続的に創出し続ける「交流・連携・挑戦」が生まれる人中心のまちづくりを描いています。

なかでも、新宿駅周辺は、業務・商業・観光の拠点として、多様な都市機能の集積という特性を生かした、東京の都市力向上への寄与が期待されているとし、今後は、新宿において、東京の成長や国際競争力強化を担う拠点形成に向けたまちづくりを進める必要があるとしています。

 

▼都心各拠点の位置付け
都心各拠点の位置付け(出所:新宿のあらたなまちづくり)
▼大規模なビジネス拠点の持続的な更新イメージ
大規模なビジネス拠点の持続的な更新イメージ(出所:都市づくりのグランドデザイン)

(2)新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~(2018年、東京都・新宿区策定)

 

①課題の整理

<まちの課題>

  • 築50年以上の老朽化した建物が集積
  • 新宿の相対的な地位が低下
  • 個性あるまち同士のつながりが弱い
  • みどりとまちとの関りが弱い 等
<ターミナルの課題>

  • 駅施設、駅ビルの老朽化
  • 駅構造が複雑でわかりにくい
  • 鉄道や幹線道路、駅前広場を横断できる空間が不足しているため、駅とまち、まちとまちの間が移動しにくい
  • 膨大な歩行者が滞留できる空間が不足 等

②構想・進捗

<グランドターミナルの再編>

  • 更新期を迎えた駅ビルの建替えを契機として新宿グランドターミナルにおいて、駅・駅前広場・駅ビル等一体的再編(東西のまちをつなぐ地下の東西自由通路、線路上空の東西デッキ、南北のまちをつなぐデッキや東西駅前広場等の整備推進)
  • 新宿グランドターミナルから、新宿のまち全体へと、交流・連携・挑戦を展開 等
<グランドターミナル事業進展

  • 足元、新宿駅直近地区において、土地区画整理事業にゆる、東西デッキの新設や東西駅前広場の再編等実施中。(2046年度事業完了予定)
  • 駅ビル再編の一環として、後記3「新宿駅西口地区開発計画」及び「新宿駅西南口地区開発計画」が進行中。(2040年度以降完了予定)

■グランドターミナルの再編イメージ

グランドターミナルの再編イメージ

3、「新宿駅西口地区開発計画」・「新宿駅西南口地区開発計画」の動向

(1)開発計画について

新宿駅直近において、新宿グランドターミナル再編の一環として、「新宿駅西口地区開発計画」及び「新宿駅西南口地区開発計画」が推進されています。
ともに、「新宿駅直近地区地区計画(2019.12.都市計画決定)」が策定され、都市計画のプロジェクト認定(都市再生特別地区の区域指定)や、東京都の国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトの区域認定を受けています。

両開発は隣接しており事実上一体的な開発となります。(以下、公表資料(2025年2月時点)による)

    • 事業完了(竣工)時期は、「新宿駅西口地区開発計画」は、2029年度予定。
      「新宿駅西南口地区開発計画」は、段階的に開発(南街区は2028年度、北街区は2040年代予定)。
    • 用途は、「新宿駅西口地区開発計画」では、高層のオフィス・商業複合施設の建設が予定されています。
      百貨店の出店計画はない模様です(隣接街区の小田急ハルクに集約済)。
      「新宿駅西南口地区開発計画」では、先行開発の南街区で旗艦ホテルの開業が公表済。又、百貨店の出店が予定されています。
      一方、北街区の事業完了時期・内容については詳細未定とされています。

 

■計画概要

計画概要

 

■位置図・イメージパース

位置図

イメージパース(出所:京王電鉄・JR東日本リリース資料に当方加筆)

■グランドターミナル計画との位置関係
グランドターミナル計画との位置関係

(出所:新宿の拠点再整備方針に当方加筆)

 

(2)エリアマネジメントとの連携

2024年に設立された「新宿グランドターミナルエリアマネジメント協議会(注)」とも連携した事業推進が企図されています。
(注)行政と鉄道5社により構成

(3)周辺開発への波及

新宿グランドターミナルの再編が長期事業計画(2040年代完了予定)であることから、周辺での開発動意の高まり(個別建替え等の促進)も、まずは新宿駅を中心とする半径400mのエリアに波及し、その後、徐々に外縁部(西口では新宿副都心やその外周部等、東口では新宿三丁目駅界隈)に波及するものと推察します。

現に、東口エリアでは、「新宿駅東口地区地区計画(しゃれ街)」による開発誘導が図られており、西口エリアでは、「西新宿一丁目商店街地区地区計画」など、まちづくりが進展しています。
こうした街区開発の他、老朽化による建替え(小田急ハルク等)等個別計画も具体化してくるものと推察します。

4、今後の展望

(1)開発事業の長期化とエリアマネジメントについて

既述のとおり、段階的開発に伴い事業が長期化するため、関係者間で目指す姿やプロセスなど、足並の乱れも懸念されます。

ターミナル駅開発として渋谷のエリアマネジメントを先導してきた東急不動産が、「新宿駅西口地区開発計画」への参画を発表しており、こうした知見等を生かした、まちづくりも一考かと思います。

(2)ビジネスモデル(駅直結のターミナルデパート)の転換について

再開発に伴い、渋谷駅直結のターミナルデパートである東急百貨店が撤退したように、従来の百貨店モデルは、運営効率や集客の両面で時代に合わなくなったとの見方もあり、新宿直結エリアでの開発動向(駅直結のターミナルデパート(百貨店)が存続するのか、ホテルなど複合施設に完全移行するのか等)を注視したいと思います。将来のまちづくりを見据えた、長期ビジョンの策定(飛耳長目の視点)等が求められると思います。

(3)デベロッパーの動向や本丸開発(西新宿の超高層オフィス街)について

当面は、新宿駅を中心とする半径400mのエリアにおいて、デベロッパー等による種地・種ビルの取得等の動きが、エリア開発や個別建替等を促進していくと思います。

その後は、以下の「新宿西口開発年表」等から、本丸の開発として、西新宿の超高層オフィス街(1970年~1980年代竣工)の「再・再開発」が視野に入ってきます。
かつての、大手町の開発でのまちづくりの手法(連鎖型都市再開発)などを踏まえ、ドラスチックな再編が望まれます。

(新宿西口開発年表)

新宿西口開発年表

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