「不動産相続」と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか?
資産を引き継ぐ喜びとともに、複雑な手続きや税金の負担を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
不動産相続では、相続税や登録免許税、不動産取得税など、さまざまな税金が関わります。
これらの税金がどのように計算されるのか、またどのように節税対策を講じるべきかを正確に理解しておくことは、相続をスムーズに進める上で非常に重要です。
本記事では、不動産相続に伴う税金の基礎知識を解説するとともに、実践的な節税対策をご紹介します。大切な資産を次世代にしっかりと受け渡すための知識を深め、安心して相続に臨むためのヒントをお届けします。
不動産相続の税金はたくさんかかる?
不動産を相続する際、一見すると大きな税金負担がかかるように思われますが、適切な節税策を講じれば負担を軽減することが可能です。特に、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」などを活用することで、相続税の負担を最低限に抑えることができます。
また、不動産相続では評価額の計算が重要なポイントとなります。不動産の評価額は立地や面積、形状などを基準に算出されますが、計算には正確さが求められます。不動産の評価ミスが生じると相続税の過少申告につながる恐れがあり、結果として追加の税金が課される可能性もあります。そのため、不動産相続に際しては専門家の助けを借りることが節税対策の重要な第一歩となります。
不動産鑑定所を使う事がメリットとなる場合もありますので、こちらの記事を参照してください。→不動産相続を成功に導くために不動産鑑定を利用する4つのメリットとは?
不動産の相続で発生する税金の種類とは?
不動産を相続する際にはさまざまな税金が発生します。不動産相続における税金は複雑で、その種類や内容を理解することが重要です。適切な税金対策を行うことで納税額を軽減することも可能です。本節では、不動産相続で発生する代表的な税金について解説します。
相続税
相続税は、被相続人から遺産を受け継いだ際に、遺産の総額に基づいて課される税金です。不動産を含む財産を受け取る場合、遺産の評価額を正確に算出する必要があります。不動産の評価額は立地や面積、形状などの要素によって算定され、税額は「相続税評価額」をもとに計算されます。
相続税は遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額が課税対象となります。基礎控除額は「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で算出されます。税額を正確に計算するには、専門家の協力を得ることも検討すると良いでしょう。
登録免許税
相続登記には、登録免許税を支払う必要があります。登録免許税は、登記を行う際に国に納める税金です。相続登記での登録免許税額は、不動産の固定資産税評価額を基に計算されます。
計算方法: 固定資産税評価額の下3桁を切り捨て、その金額に0.4%の税率を掛けた金額です。さらに、算出された金額の下2桁を切り捨てたものが、実際に支払う登録免許税額となります。
例: 固定資産税評価額が1,000万円の場合
10000000円×0.4%=40000円
この場合、登録免許税は40,000円となります。
印紙税とその役割
印紙税は、不動産相続における手続きのなかで作成される契約書や領収書などに課される税金です。たとえば、遺産分割協議書を作成する場合、この書類に印紙を貼付し納税を行う必要があります。印紙税の税額は文書の総額や種類に応じて異なるため、不動産相続で発生する手続きにおいては注意が必要です。
不動産(土地・建物)の市区町村の固定資産台帳の評価額の1000分の4(0.4%)の金額が必要になります。
印紙税の支払い漏れや不正行為は罰則の対象となるため、適切に対応することが大切です。
譲渡所得税(売却時の税金)
不動産を売却する際には、譲渡所得税が発生します。この税金は、不動産の売却金額から取得費や譲渡費用、特別控除額を差し引いた課税譲渡所得金額に基づいて計算されます。相続した不動産の場合、特別控除として最大3,000万円が適用されるため、税負担を軽減できる可能性があります。
・課税譲渡所得金額 = 収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用 ) – 特別控除額
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得として39.63%の税率が適用され、5年を超える場合は長期譲渡所得として20.315%の税率が適用されます。なお、相続による不動産の所有期間は、被相続人がその不動産を取得した日から計算される点が特徴です。
法定相続分による按分
遺産相続において、各相続人がどれだけの相続分を受け取るかは「法定相続分」に基づいて按分されます。法定相続分とは、民法で定められた相続人ごとの取り分を指します。例えば、配偶者と子ども1人が相続人である場合、配偶者の法定相続分は1/2、子どもの法定相続分も1/2となります。法定相続分に応じて不動産の相続税が按分されるため、具体的な相続額を計算する際には、まず各相続人の法定相続分を正確に算出する必要があります。また、不動産は現物分割が難しいケースが多いため、按分結果に基づいて適切な相続方法を検討することがポイントです。
控除や特例の適用方法
不動産相続にかかる税金を軽減するためには、控除や特例を的確に活用することが有効です。例えば、配偶者の場合、多くの財産を相続しても「配偶者控除」が適用され、相続税が発生しないケースもあります。また「小規模宅地等の特例」を利用すれば、一定の要件を満たす土地の評価額を最大80%減額することが可能です。
このような特例を適用するには、条件を正しく理解し、申告時に必要な書類をしっかりと準備することが重要です。これらの控除や特例を活用することで、大幅な節税が実現し、不動産相続での税金負担を軽減できます。
相続税を軽減するための特例と対策
配偶者控除について
相続税を軽減するための代表的な特例のひとつが「配偶者控除」です。この制度では、被相続人の配偶者が相続する場合、法定相続分または1億6,000万円までの相続分については、相続税が課税されません。この特例は、不動産相続においても適用されるため、相続税の負担を大幅に軽減することができます。ただし、不動産の評価額や課税対象を正確に把握することが重要です。不動産相続時には、不動産名義変更の手続きや税金対策を含めた総合的な計画を立てることが求められます。
小規模宅地等の特例とは
「小規模宅地等の特例」は、相続税を大幅に軽減できる制度として広く利用されています。この特例は、被相続人が住んでいた住宅や事業を行っていた不動産について、一定の条件を満たす場合に適用されます。例えば、被相続人の居住用宅地であれば、評価額を最大80%減額できるため、相続税の負担が大きく軽減されます。ただし、適用には条件があるため、不動産を相続する前に専門家のアドバイスを受けておくことが重要です。また、不動産相続に関する税金対策を考えるうえでは、特例の適用条件や効果について十分に理解し、計画的に活用することが鍵となります。
延納制度と物納制度
相続税の納税が難しい場合には、「延納制度」や「物納制度」を活用することができます。延納制度とは、相続税を分割払いできる制度であり、納税資金の準備が困難な場合に有用です。一方、物納制度では、現金の代わりに不動産や有価証券で相続税を納めることができます。不動産相続の場合、評価額が高く現金での納税が難しいケースが多いため、これらの制度を適切に活用することが重要です。ただし、物納を希望する場合、不動産の種類や条件に制限があるため、事前に確認が必要です。不動産相続後の税金対策として、これらの制度を駆使することで負担を軽減できる可能性があります。
下記条件を満たしたものが対象になります。国税庁HP参照
相続後、不動産を売却する際の注意点
売却時に発生する譲渡所得税
不動産を相続した後に売却すると、譲渡所得税が発生します。これは、不動産を売却して得た譲渡益に対して課税される税金です。譲渡益とは、売却価格から取得費用や諸経費を差し引いた利益のことを指します。譲渡所得税は所得税と住民税の二重構造で課税され、一般的に税率は20~39.63%とされています。不動産を相続する際には、売却時の税金負担についても対策を考えることが重要です。
取得費加算の特例
相続した不動産を売却する際には、「取得費加算の特例」を利用することで税金負担を軽減する方法があります。この特例では、相続時に支払った相続税の一部を不動産の取得費に加算することができます。
取得費が増えることで、譲渡益が低くなり、結果的に譲渡所得税が減ります。ただし、この特例を利用する条件として、不動産を売却するタイミングが相続開始から3年10ヵ月以内である必要があるため注意が必要です。
相続空き家の特例を活用する方法
相続した不動産が空き家である場合、「相続空き家の特例」を活用することで譲渡所得税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。この特例は、一定の条件を満たす空き家を売却する際に、譲渡所得から最高3,000万円が控除される制度です。
具体的な条件としては、被相続人が居住していた家屋であること、相続後に増改築を行わず、さらに売却前に解体または耐震改修を行った場合などが該当します。適用条件が細かいため、事前に確認しておくことをおすすめします。
不動産相続で発生する税金まとめ
不動産相続に伴う税金は多岐にわたり、その全体像を把握しておくことが重要です。
不動産を相続する際、最初に生じるのが相続税です。
相続税は遺産総額から基礎控除額を引いた額に基づき計算されます。
さらに、相続登記を行う際には「登録免許税」が発生します。
このほか、遺産の中に特定遺贈が含まれる場合には、不動産取得税が課せられるケースもあります。
不動産を所有し続ける場合には「固定資産税」を毎年支払う必要があり、不動産を売却する場合には「譲渡所得税」が発生します。
譲渡所得税は、売却益に応じて課され、取得費や相続税の取得費加算制度を適用することで節税対策が可能です。
また相続税を最小化するために、小規模宅地等の特例や配偶者控除などを適用することが重要です。ただし、これらは適用条件が細かく規定されているため、専門家の助言を受けることをおすすめします。
不動産相続は、税金対策次第で大きく負担を軽減できる可能性があります。
相続時に節税を実現するには、相続税の計算方法だけでなく、不動産の評価額の算出や控除・特例の適用に関する知識を事前に身に付けておくことが必要です。スムーズな手続きのためにも、計画的な準備を進めましょう。