不動産鑑定の基礎
不動産鑑定は、土地や建物の価値を客観的に評価する専門的なプロセスです。不動産の売買、相続、融資、企業の資産評価など、さまざまな場面で必要とされる重要な知識です。
不動産鑑定の基礎
1、不動産鑑定の目的

不動産鑑定の目的は、不動産の適正な「価格」を評価することです。この「価格」は市場価値や利用価値を示すもので、以下のようなケースで必要とされます。
- 不動産売買: 売買価格の妥当性を確認する。
- 担保評価: 金融機関が融資の担保として不動産の価値を判断する。
- 相続・贈与: 税務上の評価基準を明確にする。
- 訴訟や紛争: 賠償金や財産分与の基準として使用。
- 企業会計: 固定資産の評価や減損処理の根拠とする。
2、不動産鑑定評価基準

不動産鑑定は日本では「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき行われ、評価の基準や手法は「不動産鑑定評価基準」で規定されています。 基本的な評価の前提
- 正常価格: 通常の市場条件下で形成される適正な価格。
- 限定価格: 特定の条件下(例えば買主・売主が特定)での価格。
- 特定価格: 特殊な前提や条件に基づく価格。
3、評価手法

不動産鑑定では主に以下の3つの手法が用いられます。それぞれの手法を併用して評価額を求めることが一般的です。
(1)原価法
- 概要:不動産の再調達原価(再び建設・購入する場合の費用)を基に評価する。
- 計算式:再調達原価 − 減価(経年劣化・機能的陳腐化など)= 評価額
- 適用場面:建築物の価値を算定する場合に適している。
(2)取引事例比較法
- 概要:対象不動産と類似の取引事例を基に価格を推定する。
- ポイント:立地や用途、規模などの条件が近い事例を選ぶ。
- 適用場面:市場取引が活発なエリアで有効。
(3) 収益還元法
- 概要:不動産が将来生み出す収益を基に価値を算定する。
- 手法:
- 直接還元法: 1年分の純収益を還元利回りで割る。
- DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法): 将来の収益を現在価値に割り引いて合算する。
- 適用場面:投資用不動産や賃貸物件の評価に有効。