近年、不動産や再生可能エネルギーなどの資産を証券化するために、
GK-TKスキームと呼ばれる投資スキームが注目されています。
GK-TKスキームは非上場ファンド(私募ファンド)でよく利用される投資スキームの1つですが、
本記事では、GK-TKスキームの仕組み、メリットについて詳しく解説していきます。
GK-TKスキームとは?
GK-TK スキームは、対象資産を保有するSPCとして会社法上の合同会社を使用し、投資家からの匿名組合出資と金融機関等からの借入れにより調達した資金で対象資産として信託の受益権を取得する不動産証券化の仕組みをいいます。不動産投資ファンド組成の際に、最もよく使われるスキームでもあります。
合同会社とは?
合同会社のメリット
- 有限責任
合同会社は、出資者が出資額の範囲内でしか責任を負わないという特徴があります。これは、万が一会社が経営破綻した場合でも、個人の財産を守ることができるという点で大きなメリットです。
- 設立費用が安い
合同会社の設立費用は、株式会社と比べて格段に安いです。株式会社の場合、定款認証手数料などが必要となりますが、合同会社ではこれらの費用は不要です。また、資本金も1円から設定できます。
- 自由度の高い経営
合同会社は、株式会社のように外部の株主が存在しないため、出資者同士の合意に基づき自由に経営を行うことができます。定款の内容も自由に決めることができ、出資比率に応じて議決権の割合を決めたり、利益配分の方法を決めたりすることができます。
匿名組合とは?
匿名組合は、営業者と匿名組合員が出資や利益分配に関する契約を結ぶことで成立する二者間契約です。
匿名組合のメリットとは?
1.匿名性
名前を伏せたまま投資を行えるため、周囲に気付かれることがないので、自社情報を出さずとも水面下で経営拡大を行うことができます。
2.有限責任である
民法上の任意組合と異なり、匿名組合員は有限責任なので、
出資した事業がトラブルで失敗しても、出資した金額以上の損をするリスクがありません。
3.低コスト・負担の少なさ
「匿名組合契約」を締結し1度投資をするだけで、
出資者はそれ以上なにかやらなければならないことなどはありません。
レートの確認や計算などをしなくても、利益の分配を受け取ることができるのです。
4. GK-TKスキームをするメリットとは
①二重課税の回避
GK-TKスキームはで用いられる匿名組合は、そもそも「法人」ではないため、法人税の課税を受けることはありません。
実際に国税庁のHPに以下のような記述があります。
法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入し、法人が営業者である場合における当該法人の当該事業年度の所得金額の計算に当たっては、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額を損金の額又は益金の額に算入する。(昭55年直法2-15「三十三」、平17年課法2-14「十五」により改正)
引用:国税庁法人税法基本通達14-1-3(匿名組合契約に係る損益)
これを要約すると、
課税対象は匿名組合から投資家に受け取る場合の配当のみとなるので、合同会社は実質、課税所得を0にできるという意味になります。
そのため二重課税を回避することができます。
②匿名性がある
法人として出資するのは周りの競合から経営状況などを知られてしまうデメリットがありますが、匿名組合を用いることで匿名性を生かすことができます。
③倒産隔離
資産の証券化とは、不動産、船舶、航空機、再生可能エネルギー設備などの資産を裏付けとして、投資家から資金を集める手法です。この手法では、資産保有者であるオリジネーターとは別に、ヴィークルと呼ばれる発行体が設立されます。
倒産隔離とは、このヴィークルがオリジネーターとは資本的に独立していることを意味します。これは、オリジネーターが倒産しても、ヴィークルが保有する資産と投資家への利益分配に影響を与えないようにするためです。
つまりGK-TKスキームを用いることで投資関係者が倒産することによって受ける影響を防ぐことができるのです。
GK-TKスキームとは?まとめ
GK-TKスキームは、不動産や再生可能エネルギーなどの資産を証券化するために用いられる投資スキームで、
合同会社(GK)と匿名組合(TK)を組み合わせることで、投資家にとって以下のメリットがあります。
- 節税効果: 匿名組合は法人税の課税対象とならないため、二重課税を回避できます。
- 匿名性: 匿名組合員は匿名で出資できるため、競合他社に経営状況を知られるリスクがありません。
- 倒産隔離: 合同会社と匿名組合は資本的に独立しているため、オリジネーターの倒産リスクから投資家を守る。
ただし、自身の状況によってどのようなスキームを使うか検討する必要がありますので専門家などに相談することをおすすめします。