不動産証券化とは、土地や建物などの不動産を裏付けとした証券を発行する仕組みです。
これにより、不動産所有者は資金調達や財務体質の改善、リスク分散が可能になります。
また、投資家にとっては、少額から不動産に投資できる、投資先を分散できるといったメリットがあります。
今回の記事では、不動産の証券化がどのような歴史を経て今日に至るのかをおさらいできればと思います。
不動産証券化の歴史とは?
証券化とは、そのままでは売買できないものを証券に替えることで資金調達を行う手段です。
基本的には、大きな資産価値のあるもの、たとえば土地やビル、借款などを、小口の有価証券に分ける手法を指します。
証券化は、1970年代のアメリカで住宅ローン(債権)の転売によって始まったとされています。
証券化以前は、銀行借り入れが主な資金調達手段だったのですが、
証券化によって企業融資に伸び悩んだ銀行が、さらに証券化を進めていくことになりました。
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BIS規制が証券化を広めるきっかけに
また、1980年代に本格化した金融の国際化に伴う金融不安などの問題に対し、
国際金融の中央機関である国際決済銀行(BIS)が1988年にBIS規制を設けました。
これは銀行が自己資本比率8%以上を達成することを義務付けるものであり、
日本の銀行には1993年に適用されました。
こうしたBIS規制への対応として、日本の銀行は持っていた資産(特に融資債権)をより一層証券化するようになり、証券化という手法はますます普及していきました。
自己資本比率とは、ビジネス資金の中で、どのくらいが自身の元手で、どのくらいが他から借り入れたものかを表す指標となります。
「自己資本比率が低い」はつまり、大量の融資を受けて経営をしているという意味であり、
多額の借金はビジネスが破たんするリスクを高めると考えられます。
日本での不動産証券化の広がり
日本での不動産証券化の試みは、1987年の信託型不動産小口化商品の登場から始まり、
時間を経て多様な商品と制度が生まれ、現在に至っています。
1987年頃、バブルで地価が高騰しており、大量の土地の売却は地価の高騰をさらに助長するという懸念から、
1988年に、国鉄清算事業団が地価を顕在化させない土地の処分方法として証券化が提案されたのでした。
バブル崩壊後は地価が大きく下落し、その結果として企業の新たな資金調達手段として証券化に注目するようになりました。これは、事業資産としての利用を可能にしつつ、所有している不動産をより簡単に処分する方法としての証券化に対する需要が高まった結果です。
さらに、証券化は金融機関にとっても有用でした。バブル崩壊の影響で不良債権が増大し、担保となっていた不動産を売却してバランスシートから切り離すべく、証券化が積極的に利用されるようになりました。
この動きは、1997年3月に「担保不動産流動化総合対策」が発表されたことにもつながります。
近年では、都市再開発計画における巨額の資金調達手段や、国際的な会計導入の流れを背景に企業が固定資産である不動産をバランスシートから切り離して財務評価を向上させる手段としても不動産証券化が利用されています。これらの動きは、不動産証券化の重要性を今後も高めることとなるでしょう。
法制度と不動産証券化
こういった背景を踏まえ、法制度面でも不動産証券化の支えとなる法整備が進んできました。1995年には「不動産特定共同事業法」が施行され、1998年には「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」が施行されました。さらに2000年にはこの法律が改正され、「資産の流動化に関する法律」へと名称が変更され、この法律改正により、不動産を含む資産一般の流動化が可能となりました。
同時期に「投資信託及び投資法人に関する法律」も改正され、主として有価証券とされていた投資信託の運用対象に、新たに不動産等が加わったことによって不動産投資信託が組成可能となった。これにより、REITと呼ばれる不動産の投資信託が解禁され、その日本版であるJ-REITが誕生しました。
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不動産証券化の歴史まとめ
以上のように、不動産証券化の歴史は法制度の進化と密接に連動しており、
それが不動産証券化の発展と格段の進展をもたらしています。
不動産証券化市場は、今後ますます拡大していくと予想されますので不動産証券化をご検討されている方はお問い合わせください。