【鑑定実務】いろは講座(Advance3日目)
コロナ禍の今、当社では、より一層の社員教育、社内における勉強会を実施しております。
このサイトは当社求人に応募をご検討中の方々に向け、当社の若手社員を対象とした社内研修で用いた講義レジュメを公開しています
(※)Advanceは応用論点の講義も含みます
Advance3日目の講義レジュメ
【鑑定評価の条件設定(対象確定条件)】
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- 今回は鑑定評価の条件設定(対象確定条件)の講義です。
- 対象確定条件は、鑑定評価の対象とする不動産の物的事項及び権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件です。
- 現況を所与として鑑定評価の対象とするのが基本で、実務の上で最も多く見られる条件です。
- 現況は建物付の土地ですが、土地のみを建物等が存しない、「更地として」鑑定評価の対象とすることも実務上よく見られます(独立鑑定評価)。
- 鑑定評価基準改正(2014年)で加わった「未竣工建物等鑑定評価」の依頼を受ける場合もあります。
- 対象確定条件を設定する場合は、鑑定評価の利用者の利益を害する恐れがないように十分に注意する必要があります。
対象確定条件(様々な場面の条(1))
現況所与
- 現況の不動産の経済価値を把握する鑑定評価である。
- 条件設定の場面
- 担保価値の把握のための鑑定評価
- 証券化対象不動産(Jリート等)の鑑定評価
独立鑑定評価(更地として)
- 土地の最有効使用に基づく経済価値を把握する場合の鑑定評価である。
- 条件設定の場面
- 自社所有地(老朽化した社宅有)の有効活用を社内で検討する場合の鑑定評価
- 定期借地権の期間満了時において、借地権者に底地を売却する場合の鑑定評価
- 再開発における大規模画地の従前地の鑑定評価
対象確定条件(様々な場面の条件(2))
併合鑑定評価
- 不動産の併合後又は分割後の不動産の経済価値を把握する鑑定評価である。
- 条件設定の場面
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- 隣地買収のための鑑定評価において、対象地と隣地が一体となった状態(一体地)の併合鑑定評価
- 道路買収のための鑑定評価において、対象地の大部分が買収され、一部だけ残った土地の(残地)の分割鑑定評価
未竣工建物の鑑定評価
- 竣工の実現性の高い建物等について、価格時点で竣工しているものとしての経済価値を把握したい場合の鑑定評価である。
- 条件設定の場面
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- 竣工後に不動産ファンドで運用する予定の証券化対象不動産の鑑定評価
- 竣工後に収益用不動産として自社で運用する予定の不動産を購入する場合の鑑定評価
対象確定条件設定の留意点(具体例)
独立鑑定評価
Q、老朽化した空家付きの土地を購入することになり、銀行に融資を受けるため鑑定評価が必要になったのですが、独立鑑定評価の条件で良いですか。
A、担保価値の把握目的の鑑定評価は原則として現況所与で行います。独立鑑定評価の場合、建物の取り壊し費用等が考慮されないため、鑑定評価額が高めになってしまう恐れがあるためです。
併合鑑定評価
Q、隣地を買収する目的の鑑定評価において、価格の種類は限定価格になりますか。
まず、併合後の一体地と隣地単独の土地価格を比較します。一体地の土地単価が高ければ限定価格となる可能性がありますが、土地単価が変わらなければ増分価値が発生しないので正常価格となります。
未竣工建物等
Q、建物が未竣工であることに起因するリスクが担保されているか、どのように確認すればよいでしょうか。
請負契約書・建築確認通知書写・設計図書・売買契約書等を収集し、予定建物の遵法性は問題ないか、請負業者の破綻や天災があった場合においても工事中止等のリスクが回避されているかを確認します。
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株式会社中央不動産鑑定所 研修委員会