【鑑定実務】いろは講座・6日目
このサイトは当社求人に応募をご検討中の方々に向け、当社の若手社員を対象とした社内研修で用いた講義レジュメを公開しています。
6日目の講義レジュメ
【価格形成要因の分析と最有効使用の判定】
-
- 今回は価格形成要因の分析と最有効使用の判定の講義です。
- 実地調査前に、収集した資料にもとづき、机上で価格形成要因を分析します。
- 実地調査において、資料と照合しながら地域要因と個別的要因を分析します。また、事前に机上で行った要因分析の妥当性も検証します。
- 価格形成要因の分析を踏まえ、「更地としての最有効使用」と「建物及びその敷地の最有効使用」を判定します。
- 最有効使用によって適用する評価手法が異なります。そのため、十分な調査・分析を行ったうえ、最有効使用を判定する必要があります。
価格形成要因の分析
-
- 一般的要因(マクロ)
- 自然的要因 、社会的要因、経済的要因、行政的要因
- 一般的要因(マクロ)
-
- 地域要因(ミクロ)
- 住宅地域 :住環境、沿線・最寄駅・商業施設(利便性)、地域の名声等
- 商業地域 :店舗・オフィスの集積度、繁華性、ターゲット層等
- 地域要因(ミクロ)
-
- 個別的要因(ミクロ)
- 画地条件 : 敷地形状・高低差、角地・二方路など接道の状況等
- 街路条件 : 道路幅員、道路系統等
- 交通接近条件 : 最寄駅、商業施設、公共施設等
- 行政的条件 : 用途地域、建蔽率、容積率、地区計画等
- 建物の個別的要因 : 構造、階層、用途、間取り、設備、テナントの状況、建物の維持管理状況、遵法性、修繕更新の履歴と計画、環境汚染物質の有無等
- 個別的要因(ミクロ)
最有効使用の判定(1) (土地)
-
- 土地の最有効使用の判定(例)
- 住宅地(駅徒歩圏)のケース ※敷地形状や周辺環境の違い等により最有効使用は相違する
- ケース1 指定容積率200%、1000㎡、整形地(正方形、長方形)
- 分譲マンション(ファミリータイプ)の敷地…ファミリータイプの分譲マンションを想定したところ、200%の容積率を消化でき、専有部の間取りや共用部のスペース等についても周辺の標準的な分譲マンションの仕様が満たせるため、最有効使用を「分譲マンションの敷地」と判断した。
- ケース2 指定容積率200%、1000㎡、不整形地(L型、凹型、凸型、三角形など)
- 賃貸マンションの敷地…専有面積が広いファミリータイプの分譲マンションよりも、専有部が狭く、共用スペースの少ない単身者向けの賃貸マンションのほうが建物を柔軟に配置し容積率を消化できるため、最有効使用を「賃貸マンションの敷地」と判断した。
- ケース3 指定容積率200%、1000㎡、不整形地(同上)
- 分割のうえ戸建住宅の敷地…分譲マンションを想定した場合、敷地の形状や日影規制等により、使用容積率が120%にとどまるが、不整形地であっても分割は容易であり、近隣地域が閑静な住宅街という環境も考慮して、最有効使用を「分割のうえ戸建住宅の敷地」と判断した。
- ケース1 指定容積率200%、1000㎡、整形地(正方形、長方形)
- 住宅地(駅徒歩圏)のケース ※敷地形状や周辺環境の違い等により最有効使用は相違する
- 土地の最有効使用の判定(例)
最有効使用の判定(2) (建物及びその敷地)
-
- ケース1(現状建物の継続利用)
- 建物の用途が更地としての最有効使用(以下、「土地の最有効使用」という)と一致している。
- 建物の維持管理状況は良好で、経済的残存耐用年数も十分である。
- 環境と適合し、敷地と均衡している。
- ケース1(現状建物の継続利用)
-
- ケース2(現状建物を取り壊しのうえ、土地の最有効使用を実現)
- 建物が老朽化、陳腐化しており、経済的残存耐用年数が短い。
- 建物の用途が土地の最有効使用と一致していない。
- 用途変更や大規模修繕を行うと多額の費用がかかる。
- ケース2(現状建物を取り壊しのうえ、土地の最有効使用を実現)
-
- ケース3(建物を取り壊すまではしないが、用途変更を行う)
- 建物の物理的な耐用年数は十分であるが、建物の用途が土地の最有効使用と一致していない。
- 建物を新築するよりも用途変更のほうが期間や費用が合理的である。
- ケース3(建物を取り壊すまではしないが、用途変更を行う)
-
株式会社中央不動産鑑定所 研修委員会