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不動産相続とは?わかりやすく解説します。

相続とは、被相続人(亡くなった方)の財産や権利義務を、法定相続人が引き継ぐことです。相続は被相続人が亡くなった時点で開始され、その日を「相続開始日」と呼びます。相続財産には、土地や建物などの不動産、現金、預貯金などのプラス財産だけでなく、借金や損害賠償責任といったマイナス財産も含まれます。このため、相続手続きには十分な知識が必要です。

特に不動産相続は、財産の大部分を占めるケースが多く、相続財産全体の約40%が土地や家屋にあたると報告されています(※国税庁「令和3年分 相続税の申告実績の概要)。そのため、相続人が複数いる場合、不動産の分割方法や評価についてあらかじめ理解しておくことが重要です。この記事では、不動産相続の基本と4つの分割方法について詳しく解説します。

 不動産相続方法と4つの分割方法

不動産は現金のように簡単に分割できないため、相続人の間での合意が重要です。不動産相続には、主に以下の4つの方法があります。

  1. 現物分割

現物分割は、相続財産をそのままの形で分ける方法です。不動産を分割する場合、土地が対象となることが一般的ですが、建物の場合は物理的に分けることが難しいため、この方法は主に土地相続で用いられます。ただし、土地の面積が狭すぎて分割が困難であったり、分割することで土地の価値が著しく低下する場合は不向きです。

メリット: そのままの不動産を維持できるため、手続きが比較的簡単です。

デメリット: 土地の面積が狭い場合や、分割すると価値が著しく低下する場合には不向きです。例えば、都市部での土地分割は価値が大幅に下がる可能性があります。

  1. 代償分割

代償分割は、特定の相続人が不動産を相続し、その相続人が他の相続人に対して相続分に相当する金銭を支払う方法です。この方法は、例えば不動産を相続した相続人がそのまま住み続ける場合や、他の相続人が現金を望んでいる場合に有効です。しかし、代償金の額を巡って争いが生じやすいほか、相続人が代償金を用意できなければ、この方法を選択することはできません。

メリット: 特定の相続人がそのまま不動産を所有・使用できるため、家族が住み続けることが可能です。また、他の相続人は現金を受け取れるため、柔軟な分割が可能です。

デメリット: 代償金の金額を巡って争いが生じるリスクがあります。また、相続人が代償金を準備できない場合、この方法は選べません。

  1. 換価分割

換価分割とは、不動産を売却して、その売却代金を相続人間で分割する方法です。不動産そのものを分けるのが難しい場合、現金化することで均等に分配できます。全ての相続人が不動産を望まない場合に最も適した方法ですが、売却価格に左右されるため、希望額に届かないリスクがあります。また、売却益に対して譲渡所得税が課せられる可能性もあるため、注意が必要です。

メリット: 売却代金を現金で分配できるため、相続人間で均等に財産を分けることが可能です。評価額が明確になるため、公平な分割が期待できます。

デメリット: 売却価格が市場動向に左右されるため、思った以上に低い金額で売却されるリスクがあります。また、売却益には譲渡所得税が課される可能性があるため、税金面での負担が増えることもあります。

  1. 共有名義

共有名義は、不動産を複数の相続人が「共有持分」を持ち合い、共同所有する方法です。共有名義にすると、不動産を売却したり貸し出したりする際に、すべての共有者の同意が必要となります。このため、意見が一致しない場合や連絡が取れない場合にはトラブルになる可能性があります。さらに、相続が繰り返されると共有者が増え、管理が複雑化するリスクもあります。

メリット: 不動産を売却することなく、複数の相続人が同時に所有できるため、不動産を保持したい場合には有効です。

デメリット: 不動産を売却したり貸し出したりする際には、すべての共有者の同意が必要となるため、意見が合わない場合にトラブルが発生するリスクがあります。さらに、相続が繰り返されると共有名義人が増えてしまい、管理が一層困難になる可能性があります。

不動産相続の種類別注意点

不動産の相続には、土地、一戸建て、マンションなどさまざまな種類がありますが、それぞれに特有の注意点があります。

  • 土地の相続

土地相続では、代償分割や換価分割を選ぶ際に、価格変動を考慮することが重要です。相続時点と分割時点で土地の市場価格が変動する可能性があるため、相続人間での合意が必要です。また、土地の利用価値や立地条件によって評価額が大きく変わるため、早めに売却や分割の方針を決定することが望ましいです。

  • 一戸建ての相続

一戸建ての住宅を相続する際、空き家にしておくと「特定空家等」に指定されるリスクがあります。特定空家等に指定されると、小規模住宅用地特例が適用されず、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性があります。相続後に住む予定がない場合は、早めに売却や賃貸での活用を検討すべきです。

  • マンションの相続

マンション相続では、特に築年数がポイントです。築年数が古くなると入居者を確保するのが難しくなるほか、毎月の管理費や修繕積立金の支払いが発生します。さらに、将来的に修繕積立金の増加が見込まれるため、長期的な維持管理コストをしっかり把握しておく必要があります。

生前贈与の活用

将来の相続税対策として、財産を生前に贈与する「生前贈与」も有効な手段です。生前贈与を行うことで、相続税の負担を軽減することが可能です。代表的な控除制度は以下の通りです。

  1. 暦年課税の基礎控除:1年間(1月1日から12月31日)で贈与された財産が110万円以下であれば非課税となります。
  2. 夫婦間での居住用不動産贈与の配偶者控除:基礎控除110万円に加え、最高2,000万円まで贈与税が控除されます。
  3. 相続時精算課税制度:60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫に対して、2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。

相続登記の義務化(2024年4月1日開始)

2024年4月1日から、不動産の相続登記が義務化されます。相続登記とは、不動産を相続した際にその不動産の名義を相続人に変更する手続きです。これまでは任意の手続きでしたが、2024年からは3年以内に登記を行わなければ10万円以下の過料が課される可能性があります。

相続登記を行わないリスク

相続登記を放置すると、相続人間の権利関係が複雑化し、将来的に不動産を売却したり担保に供したりする際に支障が出る可能性があります。さらに、相続人の一部が行方不明になったり、持分が第三者に渡ってしまうリスクもあります。早めに相続登記を済ませることで、不動産の権利を守ることが重要です。

相続登記にかかる費用

不動産相続をする際には、相続税に加え、相続登記に関連する費用が発生します。相続登記は、不動産の名義変更手続きであり、相続した不動産の権利を法的に確定するために必要な手続きです。ここでは、相続登記にかかる主な費用について解説します。

  1. 登録免許税

相続登記には、登録免許税を支払う必要があります。登録免許税は、登記を行う際に国に納める税金です。相続登記での登録免許税額は、不動産の固定資産税評価額を基に計算されます。

  • 計算方法: 固定資産税評価額の下3桁を切り捨て、その金額に0.4%の税率を掛けた金額です。さらに、算出された金額の下2桁を切り捨てたものが、実際に支払う登録免許税額となります。

例: 固定資産税評価額が1,000万円の場合

10000000円×0.4%=40000円

この場合、登録免許税は40,000円となります。

  1. 登記事項証明書や書類取得の費用

相続登記には、登記事項証明書、戸籍謄本、住民票などの書類を揃える必要があります。これらの書類は、それぞれ取得する際に費用が発生します。

  • 登記事項証明書の手数料: 法務局の窓口で書面にて交付を請求する場合、不動産1件につき600円の手数料がかかります。
  • 戸籍謄本や住民票: これらの書類を市区町村役場から取得する際の費用は、各自治体によって異なりますが、一般的に数百円程度です。

※令和6年3月から戸籍謄本は本籍地だけではなく全国どこでも取れるようになりました。

  1. 郵送費などのその他費用

書類を法務局に郵送する際の郵送費や、各書類を取り寄せる際の手数料も含まれます。これらは、手続きを進めるうえで必要なコストであり、相続登記全体の費用に影響を与えるものです。

 まとめ

不動産の相続とは、複雑な手続きと相続人間での協議が必要になります。現物分割、代償分割、換価分割、共有名義の4つの方法を理解し、自身の状況に最も適した方法を選択することが重要です。また、適切な書類を揃え、スムーズに相続手続きを進められるよう、早めに準備を整えることが大切です。

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